のどの疾患について
のどは言葉を発するための機能と、食べ物を食道や胃に送り込む大事な役割があります。また鼻同様に空気を十分に温め、加湿し、口から入ってきた細菌やウイルスの体内への侵入も防いでいます。
以下のような症状はご相談下さい
- 口が乾く
- のどが痛い
- のどの痛みに加えて咳や痰がでる
- のどの異物感
- 飲み込みが悪い
- 声がかすれる 声がかれる
- のどのつまり感・違和感
- いびき
- 睡眠時の無呼吸
- のどに骨がささった
- のどが腫れる
- 味覚がおかしい
代表的なのどの疾患
1:咽頭炎、扁桃炎、喉頭炎
咽頭炎とはその名のとおり咽頭(のど)に炎症がおきる病気です。ウイルスや細菌による感染症で、のどが痛くなり熱が出る風邪は咽頭炎のことを指します。
軽度であれば炎症止め、中等症以上であれば菌検査をし、適切な抗生剤を内服していただきます。 また、扁桃炎を繰り返す慢性扁桃炎になってしまった場合は扁桃腺をとる手術を勧めることもあります。
慢性扁桃炎は病巣感染症としてIgA腎症や掌蹠膿疱症などの原因になることもあります。当院では扁桃腺摘出後に上咽頭に扁桃組織が残る方にEAT(Bスポット療法)も行っています。 喉頭炎とは咽頭の下、気管の入り口のあたりのに炎症がおこる病気です。強い痛みと声がれ、咳などが生じます。内視鏡で観察し適切な処置を行います。空気の通り道でもあるので、こちらにひどい炎症があると呼吸困難に陥る可能性があります。入院点滴、さらには気管切開が必要になることもありますので、腫れが強いと判断した場合は病院に紹介になります。
2:扁桃周囲膿瘍
急性扁桃炎に続いて起こり、口蓋扁桃の周囲に炎症が及んで扁桃周囲炎が発症します。さらに扁桃の奥に膿がたまってしまうと、扁桃周囲膿瘍と呼ばれる状態になります。
早急に治療をしないと重症化する場合もあり、身体の下へ膿瘍が拡大し、喉頭浮腫(炎症により気道が狭くなる)、頚部膿瘍、縦隔膿瘍に進展し重篤になる場合もあります。
気道(空気の通り道)をふさいでしまう可能性のある、緊急性が高い病気です。
つばも飲み込めない、呼吸がしにくい、こもった声になってしまう、という症状があるときはすぐに受診してください。気道閉塞が生じているとクリニックでは対処は難しく、すぐに近隣の病院に紹介となります。大きな病院にもあまり耳鼻科の当直医は滞在しておらず、遅い時間ですと専門ではない医師の診察となる可能性がありますので、できるだけ早い時間、できれば朝一で受診してください。
3:声がれ(嗄声)、声帯炎、声帯ポリープ
のどの使い過ぎによる一時的な声のかすれは心配ありません。声のかすれ、声がれが何週間も続く場合や、徐々に進行する場合、また反復して起こる場合などは、原因を特定するため鼻から入れる細い内視鏡検査(ファイバースコープ)で直接声帯を確認します。
風邪、扁桃炎、咽喉頭炎、気管支炎、声帯炎のほか、逆流性食道炎による喉頭肉芽腫、声帯ポリープや声帯結節、喉頭癌が原因のこともあります。
他に頚部の手術による合併症や脳や胸の腫瘍、大動脈瘤などによって声帯の運動障害が生じ、声がかすれる場合もあります。(反回神経麻痺)
原因は多岐にわたり、時には癌などの重い病気のシグナルであったりもします。例えば、下記の喉頭がんの症状としても、喉の違和感・声のかすれはみられますので、十分に注意する必要があります。声帯、喉頭は鼻から入る細い内視鏡ですぐにチェックできますので、気になる方は受診してください。
原因が様々なため、治療もそれに適したものを選択する必要があります。炎症であれば内服治療や吸入、腫瘍性疾患であれば手術などになります。
4:咽頭癌、喉頭癌
咽頭癌、喉頭癌は、喫煙者と大量にお酒を飲む方に多い疾患です。
咽頭癌は口の中やのどにできる癌で、喉頭癌はおもに声帯にできる癌です。
喉頭癌は声門上部にできる「声門上癌」、声帯にできる「声門癌」、声門下部にできる「声門下癌」の3つに分けられ、症状もそれぞれに異なってきます。
声門上癌:喉仏のあたりの異物感、いがらっぽさ、食べ物を飲み込むときに痛む、などの症状が見られます。
声門癌:喉頭では一番多く、声がれが初期から生じるため発見されやすい癌です。食べ物を飲み込むときに違和感を伴うこともあります。
声門下癌:かなり進行するまで自覚症状がありませんが、最初の症状は、やはり声のかすれです。
喉頭癌は内視鏡で診断します。耳鼻科の鼻から入る内視鏡は予約は必要なく、その場ですぐに検査できます。検査時間は3~5分程度です。
治療は手術、放射線、化学療法となりますので、発見次第病院を紹介します。
5:耳下腺炎・顎下腺炎、耳下腺癌・顎下腺癌
耳の下にある耳下腺、顎の下にある顎下腺という唾液を作る腺に炎症が生じた状態で、主な原因はウイルスや細菌の感染です。唾液の流れが悪くなり、唾液を出す管がつまって炎症を起こすこともあります。ウイルス性の代表的なものとしては、流行性耳下腺炎、いわゆる「おたふく風邪」があります。唾液腺炎を発症するとまず炎症のある場所が腫れて痛くなります。抗菌作用、粘膜保護作用、消化作用など、唾液のもつ機能も低下します。
採血で炎症が起こっているかを確認し、同時に抗生剤を飲んでいただくこともあります。
唾液がつまって石のようになる「唾石症」という病態もあり、触診とCTで診断します。
耳下腺癌、顎下腺癌は唾液腺にできる癌で、初期は痛みのないしこりとして触れます。耳下腺腫瘍、顎下腺腫瘍は良性のことが多いのですが、初期の段階で見極めることが難しい場所でもあります。この場合はエコーやMRI、細胞診などが必要になりますので、耳下腺顎下腺部にしこりを認めた場合は病院に紹介となります。
6:口内炎
口内炎は、口の中やその周辺の粘膜に起こる炎症の総称です。
ビタミン不足、疲労やストレス、口の内側を噛むなど、様々な原因で起こり、口の中の粘膜であれば頬の内側や唇の内側、歯ぐき、舌など、どの部分にもできます。全身疾患の一つの症状として起こるケースもありますので、口の中のどこにできているか、多発していないか、繰り返していないか、治りにくくはないか、などを総合的に判断する必要があります。
7:口腔乾燥症(ドライマウス)
唾液の分泌が低下して口が異常に乾きやすくなった状態のことで、よく“ドライマウス”とも呼ばれます。糖尿病やシェーグレン症候群、薬の副作用(抗ヒスタミン薬、抗コリン薬等)、老化、口呼吸、ストレスなどが原因になります。
8:逆流性食道炎
胃酸が逆流して、のどの違和感、異物感、声がれ、咳などが生じる疾患です。ストレスが多く、生活が不規則な方によくみられます。
げっぷや胸やけがあれば自覚しやすいのですが、のどの違和感程度の場合は胸やけなどの症状がない場合も多くみられます。
耳鼻咽喉科では鼻から入る細い内視鏡で喉の奥を観察することによって判断します。
食道とのどの境目が赤くなることが多く、比較的容易に診断ができます。逆流性食道炎を疑った場合には胃酸抑制剤を処方し、食事のとり方などを指導しています。
9:咽頭異物
よくあるのは魚の骨です。その他、薬の包装や食べ物など、のどにひっかかって取れないときはご相談ください。
注:クリニックでは緊急な対応はできないため、呼吸が苦しいなどの呼吸症状がある場合はすぐに救急科のある病院に受診するようにしてください。また、骨は刺さった後にご飯をたべたりすると刺さり込んで取れなくなることがありますので、できるだけ固形物は食べない状態で来ていただけると助かります。
10:慢性上咽頭炎
鼻の奥とのどの間に慢性的な炎症が起こる疾患です。粘性の鼻水がのどに降りてくる不快感はもちろんのこと、免疫系や自律神経の不調なども引き起こすと考えられています。
上咽頭は鼻から吸い込んだ空気が最初に合流する部分であり、空気中のウイルスや細菌が体の中に侵入するのを防ぐ重要な役割を担う場所です。風邪やアレルギー以外にも、生活環境(職場の空気など)が悪かったり、ストレスが長く続いたりすると慢性的に炎症が起こってしまい、様々な影響を体におよぼします。
よくある症状は、後鼻漏、のどのイガイガ、のどの詰まった感じ、痰がからむ、頭痛、肩こり、慢性疲労など、多岐にわたります。
上咽頭は内視鏡を使わないと見えない場所であるため、耳鼻咽喉科以外で診断されることはほとんどありません。そのため数が多いわりにはあまり知られていない疾患です。
上咽頭はまず内視鏡で観察し、膿などがついていれば菌検査を行います。アレルギーの可能性がある場合は採血で検査します。菌がわかれば抗生剤の内服、アレルギーであれば抗アレルギー剤の内服や点鼻で治療を行います。内服治療で改善しにくい場合には当院ではBスポット療法(EAT)も行っていますので、慢性上咽頭炎を疑われる方は一度ご相談ください。Bスポット療法はノドから行うと咳が出るため、コロナ禍以降はマスクをした状態で鼻から時間をかけて丁寧に行うようにしています。(料金は初回は内視鏡代を含めて3割負担の方で約3000円、2回目以降は処方など無ければ約400円です。)
11:味覚障害
味覚障害で有名なものは亜鉛不足です。風邪や歯周病など、口腔内の感染症に続発することもあります。風邪などによるものは一時的なものですので、1~2週間ほどで改善します。なかなか治らないものは亜鉛や銅などのバランスが悪くなっている可能性がありますので、採血で検査をします。
12:咽喉頭異常感症
のどの違和感が長期にわたり続く状態で、様々な検査を行っても異常が指摘できないときにこの病名がつきます。
内視鏡で観察して異常がなければ喉頭アレルギーなどの検査を行います。アレルギーもなければMRIなどの画像的精査も行い、何も異常が無ければ「違和感を感じているだけ」ということになってしまい、精神的な問題と考えられています。異常がないことを確認することによって安心し、症状が改善する方もおられるため、しっかり検査を受けられることも大切だと考えています。また、試してみるべき漢方薬などもありますので、あきらめずにご相談ください。